この記事を読んで分かること
まず養育費の支払い義務は、子供が最低限の生活ができる為の扶養義務という訳ではありません。
養育費の支払い義務とは、生活保護義務といわれ、親の生活と同じ程度の生活を、扶養を受けるものにも保持させる義務です。
これはもちろん別居や離婚した後でも同様で、親権を持たない親(=非監護親)が暮らしている水準と同様の生活水準を保てるように支払わなければいけません。
また非監護親が生活が苦しいから払えない場合は、その親が生活水準を落としてでも支払わなければいけません。
ですので、未成年の子供がいる夫婦が離婚する際には、しっかり養育費の金額を決めておく事が親の責任です。
この養育費について、2019年に16年ぶりに改正された養育費算定表をみても近年の社会情勢から増額傾向となっています。
養育費算定表の改正についてはこちら↓の記事も参考ください。
この記事では養育費の相場や、世の中の実態を把握し、あなたの場合の適正な養育費を把握してもらえる参考にしてもらえればと思います。
以下図は、厚労省から出されている「平成28年全国ひとり親世帯等調査報告」から、養育費がどれだけ支払われているか?が分かるグラフです。
離婚協議書などの証書で養育費の取り決めをしていても、養育費が滞る可能性は45%、取り決めをしていない場合は97%が養育費を受け取れていないというのが実態です。
子供がいる夫婦が別居、離婚する際には、最低限として証書を残しておきましょう。
未成年の子の数 | 総数 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人 | 5人以上 |
総数 | 16,544 | 8,384 | 6,215 | 1,690 | 216 | 39 |
1万円以下 | 610 | 317 | 210 | 62 | 16 | 5 |
2万円以下 | 2,004 | 1,090 | 675 | 204 | 27 | 8 |
4万円以下 | 6,291 | 3,793 | 2,026 | 427 | 39 | 6 |
6万円以下 | 3,842 | 1,850 | 1,551 | 407 | 32 | 2 |
8万円以下 | 1,690 | 641 | 860 | 142 | 40 | 7 |
10万円以下 | 958 | 305 | 401 | 223 | 24 | 5 |
10万円超 | 1,136 | 380 | 487 | 225 | 38 | 6 |
離婚調停を経て養育費の月額が決まったケースで1番多いのは4万円以下という事が分かるかと思います。
なお上記表は子供1人あたりの養育費になります。
とは言え、冒頭に説明したように養育費は基本的に相場・上限はなく、夫婦で決めた金額にする事ができます。
また調停離婚、審判離婚、裁判離婚の際には「養育費算定表」を基に金額が設定されます。
養育費・婚姻費用算定表(裁判所HPへ)
養育費算定表をみるポイントは3つだけです。
算定表のページ数は多いですが、右上の家族構成から自分に当てはまるもの1枚をみつけ、「表下の請求する方の年収」と「表左の支払う方の年収」が交差する□の色に書かれている金額が算定金額になります。
養育費算定表の右上に書かれている一覧が以下になります。ご覧の通り、養育費と婚姻費用それぞれありますので、ご自身に該当する表1枚だけ(養育費と婚姻費用は別)をみてください。
ご自身の算定表がみつかったら、次に算定表の下側【権利者の年収/万円】からご自身の年収をみつけてください。自営業と給与所得者かで2行になっていますので該当する方に印をつけてください。
最後に算定表の左側【義務者の年収/万円】から相手の年収をみつけてください。こちらも自営業と給与所得者かで2行になっていますので該当する方に印をつけてください。先程の2と交差する□部分の色の金額が養育費、婚姻費用の相場になります。
ここまで説明したように、養育費は親と同等の生活が出来るだけの金額設定ができます。
例えば、子供が私立の学校に通っている場合には、養育費算定表以上の金額を請求することも可能です。
養育費の金額は、基本的には夫婦が離婚・別居する前、離婚・別居した後に話しあって決めていきます。話しあいで金額が決まったら合意書を作成しましょう。
合意書だけで支払いが確実で信頼できる相手なら良いのですが、そうではない方が多いのが現実です。公正証書にしておくことをおすすめします。また話しあいで決められない場合は、3.の離婚調停ですすめましょう。
家庭裁判所へ離婚調停の申し立てをすると、調停委員が間に入り取り決めることができます。
原則請求した時点から(*過去に遡って請求はできません)未成年の子どもが20歳になるまでです。
なので、子どもが大学に通学する場合にはあらかじめ大学卒業まで養育費をもらいたい旨を、離婚協議や離婚調停でしっかりと主張し、親権を持たない親(非監護者)を説得する必要があります。
なお養育費は、月々の分割払いです。分割払いだと今後相手が払い続けてくれるかどうか不安があるかと思いますが、相手方に一括での支払を強制させることはできません。
相手との合意があれば一括払いでの支払を受けることもできますが、調停離婚・審判離婚・裁判離婚の場合は大学卒業まで養育費を認めてもらうことはできないと思っておいたほうがよいです。
一旦決まった養育費に関して、相手(元夫婦)とあなた双方の事情が変わった場合に増減額の請求がお互いにできます。
例えば、支払い義務者の収入が大幅に減った場合は減額もあり得ますし、逆に子供が病気になり医療費が増えた場合には増額も可能です。
離婚した元夫婦の為、相手が再婚し家族を持っている場合もあり、2人での話し合いでの変更はなかなか難しいと思いますが、弁護士さんを通して法律に則って変更するケースが多いのが現実です。
離婚調停や離婚審判、離婚裁判で養育費の支払を定めたにもかかわらず、養育費が支払われない場合、家庭裁判所から支払をするよう相手方に勧告をしてもらったり、支払をするよう命令してもらうことができます(履行勧告および履行命令)。
養育費の場合は相手の給与の差し押さえも可能で、相手の月収の2分の1までの差し押さえが認められています。
これまで説明した養育費は別居中も請求ができますが、別居の際には子供の養育費だけではなく、生活費用(婚姻費用)も請求できますので合わせて↓の記事も参考にしてください。
モラハラ、別居、生活費、離婚などについてご不明点、具体的にすすめたいけど分からない方は、お気軽に専門家へ無料相談をしてみてください。