相談者より
財産分与について教えてください。
暗号資産を持っている可能性がある場合、話し合いがまとまらないときの進め方は?
相手が暗号資産を持っていそうなのに認めない場合は、まず「どんな取引所・アプリを使っていたか」を具体的に洗い出し、通帳・クレカ明細などの証拠を集めたうえで、調停や裁判で開示を求める流れになります。証拠がないと追及が難しくなるので、早めに記録を確保することが重要です。
暗号資産は現金や株と同じく、結婚中に増えた分は原則として財産分与の対象になります。
暗号資産は、ビットコインやイーサリアムなどの「仮想通貨」のことで、スマホアプリや取引所の口座で管理されます。名義や口座が見えにくいため、離婚時の財産分与で「隠されやすい財産」の代表例になっています。
話し合いがまとまらない場合の基本的な進め方は、次のステップです。
1. 相手が暗号資産を持っていそうか整理する
– 過去に「仮想通貨で儲かった」「ビットコインを買った」などの発言があった
– スマホに暗号資産のアプリ(取引所アプリ、ウォレットアプリ)が入っていた
– 仮想通貨関連の本やサイトをよく見ていた
2. お金の流れから手がかりを探す
– 銀行通帳・ネットバンキングの履歴を確認し、「○○取引所」「○○株式会社」などへの入金がないかチェック
– クレジットカード明細で、暗号資産取引所や海外取引所への支払いがないか確認
– 大きな現金引き出しが続いた時期と、暗号資産の話をしていた時期が重なっていないかを見る
3. 証拠になりそうなものを確保する
– 通帳のコピーや、ネットバンキングの画面を印刷・PDF保存
– クレジットカード明細の保存
– 暗号資産アプリのアイコンや、取引画面が写っている写真・スクリーンショットがあれば保管
4. 話し合いで開示を求める
– 「○年○月ごろに○○取引所に入金していたようだけど、暗号資産の残高を見せてほしい」と、具体的に話す
– 取引履歴や残高の画面、取引所からのメールなどの提示を求める
5. 話し合いでダメなら調停・裁判で開示を求める
– 家庭裁判所の調停や裁判では、銀行や証券会社と同じように、暗号資産取引所の記録の提出を求めることがあります
– ただし、海外取引所や個人ウォレットなど、追跡が難しいものもあり、すべてを完全に把握できるとは限りません
6. 「ある程度の証拠」から推測して主張する
– 通帳や明細から「毎月○万円を○○取引所に入金していた」などが分かれば、その金額や時期から、暗号資産の保有を推測して主張することもあります
このように、暗号資産は目に見えにくい財産ですが、現金やカードの動きから「足跡」をたどり、話し合い・調停・裁判の場で開示を求めていく流れになります。
暗号資産は隠されやすく、証拠が弱いと「ない」と言い切られてしまうリスクがあります。
暗号資産に関するトラブルで多いのは、次のようなケースです。
1. 「もう全部売った」「損してなくなった」と言われる
– 実際には一部を別の取引所やウォレットに移している場合もあります
– 売却して現金化していても、そのお金が残っていれば財産分与の対象になる可能性があります
2. 海外取引所や個人ウォレットに移されてしまう
– 海外の取引所や、紙・ハードウェアウォレットに移されると、第三者からの照会が難しくなります
– その前段階の「日本の取引所への入金」「日本円の出金」など、追える部分の証拠をどれだけ残せるかが重要です
3. 証拠がなく「疑っているだけ」の状態になる
– 「暗号資産をやっているはず」と感じていても、通帳や明細などの客観的な記録がないと、調停や裁判で認めてもらうのは難しくなります
– 逆に、少額の入金しか証拠がない場合は、「趣味程度の少額取引」と判断されることもあります
4. 暗号資産の価値の変動で揉める
– 暗号資産は価格の上下が激しく、「いつ時点の価格で評価するか」が問題になります
– 一般的には、別居時や話し合い・調停時など、一定の時点の価格で評価されますが、相場の急変があると不公平感が出やすい点に注意が必要です
5. 一方が暗号資産の仕組みを理解しておらず、不利な条件を飲んでしまう
– 「よく分からないから、相手の言うとおりでいい」としてしまうと、本来もらえるはずの財産を逃してしまうおそれがあります
こうしたトラブルを避けるには、「疑い」だけで動くのではなく、できる限り客観的な記録を集めてから主張することが大切です。
暗号資産がありそうなのに話し合いが進まないときは、感情的に責める前に、まず「記録集め」と「整理」から始めるのがおすすめです。
1. まず自分でできること
– 過去の通帳・ネットバンキング履歴・クレジットカード明細をできるだけ長い期間分、保存・印刷する
– 暗号資産アプリのアイコンや、取引画面を見た記憶があれば、いつ頃・どんなアプリだったかメモに残す
– 相手が暗号資産の話をしていた時期や内容を、思い出せる範囲で書き出す
2. 話し合いの場での伝え方
– 「隠しているでしょ」と決めつけるより、「この入金は○○取引所ですか? 残高と取引履歴を見せてほしい」と、具体的に求める
– 口頭だけでなく、メールや書面で「いつ・どの取引所・どの期間の取引履歴を見せてほしいか」を残しておく
3. 話し合いで解決しない場合
– 家庭裁判所の調停を利用すると、第三者を交えて話し合いができます
– それでも開示が進まない場合は、裁判手続きの中で、銀行や取引所の記録の提出を求める方法が検討されます
4. 専門的な判断が必要なとき
– 暗号資産の金額が大きい、海外取引所を使っていそう、価格の評価時期で揉めている、といった場合は、法律や税金に詳しい人に早めに相談した方が安全です
– 相談するときは、「通帳・明細・スクリーンショットなど、持っている資料一式」と「いつ・どんな暗号資産の話があったかのメモ」を持参すると、状況を伝えやすくなります
暗号資産は、後から証拠を集めるほど難しくなります。別居や離婚を意識し始めた段階で、通帳や明細などの記録をきちんと確保し、冷静に情報を整理したうえで、公的な手続きの利用も視野に入れて進めていくことが大切です。
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