この記事を読んで分かること
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大に起因して、生活不安やストレスから、DV(ドメスティックバイオレンス)の増加が深刻化しています。
「保護命令」という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、「接近禁止命令」は聞いたことがあるのではないでしょうか?
実はこの「接近禁止命令」も「保護命令」の中の1つなのです。
保護命令は、DV防止法(配偶者暴力防止法)にもとづく措置で、相手から暴力を振るわれて生命や身体への危険がある場合に、暴力を振るっている相手への接近等を禁止する裁判所の命令です。
DVを受けているかも?と少しでも思っている方は、ぜひこの記事を参考に保護命令の活用を検討してください。
保護命令には以下5つ種類があります。
ただし、2〜5については「1.接近禁止命令」の実効性をより確保するためのふずい的な制度です。
したがって、2〜5は単独で求めることは出来ません。
「1.接近禁止命令」の発令と同時か、既に「1.接近禁止命令」が出ている場合にのみ追加で発令することが出来ます。
(参照:裁判所HP)
では、それぞれ詳しくみていきましょう。
申立人への接近禁止命令
6か月間,申立人の身辺につきまとい,又はその通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずる保護命令
引用元:裁判所HP「保護命令の種類」
裁判所の文章通りですが、簡単にまとめるとDV相手に対して以下2つの行動を禁止する保護命令です。
「あなたの身辺」といっても、具体的にあなたから半径○○m等の距離は定められていません。
接近禁止命令が発令されると警察や配偶者暴力相談支援センターへ通知がいきますので、別居先の警察の方へも連絡しておくと良いでしょう。
申立人への電話等禁止命令
申立人への接近禁止命令の期間中,次に掲げるいずれの行為も禁止する保護命令
1.面会の要求
2.行動を監視していると思わせるような事項を告げ,又は知り得る状態に置くこと
3.著しく粗野又は乱暴な言動
4.無言電話,又は緊急やむを得ない場合を除き,連続して,電話をかけ,ファクシミリ装置を用いて送信し,若しくは電子メールを送信すること
5.緊急やむを得ない場合を除き,午後10時から午前6時までの間に,電話をかけ,ファクシミリ装置を用いて送信し,又は電子メールを送信すること
6.汚物,動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し,又は知り得る状態に置くこと
7.名誉を害する事項を告げ,又は知り得る状態に置くこと
8.性的羞恥心を害する事項を告げ,若しくは知り得る状態に置き,又は性的羞恥心を害する文書,図画その他の物を送付し,若しくは知り得る状態に置くこと
引用元:裁判所HP「保護命令の種類」
こちらも裁判所の文章通りですが、簡単にまとめるとDV相手に対して以下8つ全ての行動を禁止する保護命令です。
「1.接近禁止命令」の発令だけだと、接近禁止命令が発令された後に、DV相手はあなたに対してストーカーのようにつきまとう、嫌がらせをしてくる可能性もあります。
そのため、「1.接近禁止命令」の申立てをする際には、「2.電話等禁止命令」も合わせて申請したほうが良いでしょう。
申立人の子への接近禁止命令
申立人への接近禁止命令の期間中,申立人の同居している子の身辺につきまとい,又はその通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずる保護命令
※当該子が15歳以上のときは,子の同意がある場合に限ります。
※相手方が申立人と同居している子を連れ戻す疑いがあるなどの事情があり,子の身上を監護するために申立人が相手方と面会せざるを得ない事態が生じるおそれがある場合に,申立人の生命又は身体に対する危険を防止するために発せられます。
引用元:裁判所HP「保護命令の種類」
こちらも裁判所の文章通りですが、子供がいる場合には更に「3.子への接近禁止命令」も申請しましょう。
簡単にまとめるとDV相手に対して以下の行動を禁止する命令です。
ただし「3.子への接近禁止命令」については、子供が15才以上の場合には、子供の同意も必要になります。
申立人の親族等への接近禁止命令
申立人への接近禁止命令の期間中,申立人の親族その他申立人と社会生活において密接な関係を有する者(以下「親族等」という。)の身辺につきまとい,又はその通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずる保護命令
※当該親族等が申立人の15歳未満の子である場合を除き,当該親族等の同意があるときに限ります(当該親族等が15歳未満又は成年被後見人である場合には,その法定代理人の同意)。
※相手方が親族等の住居に押し掛けて著しく粗野又は乱暴な言動を行っていることなどから,申立人がその親族等に関して相手方と面会せざるを得ない事態が生じるおそれがある場合に,申立人の生命又は身体に対する危険を防止するために発せられます。
引用元:裁判所HP「保護命令の種類」
こちらも裁判所の文章通りですが、親族や親身になってくれる友人や同僚がいる場合には更に「4.親族等への接近禁止命令」も申請しましょう。
DV相手があなただけではなく「1.接近禁止命令」が発令された後に、あなたの親族や友人、同僚のところへ行って、迷惑行為、危害を与える恐れがある場合は、それらの行動を禁止する保護命令です。
退去命令
2か月間,申立人と共に生活の本拠としている住居から退去すること及びその住居の付近をはいかいしてはならないことを命ずる保護命令
※申立人と相手方が生活の本拠を共にする場合に限ります。
引用元:裁判所HP「保護命令の種類」
こちらも裁判所の文章通りですが、DV相手をあなたの家から2ヶ月間退去させる保護命令です。
更に家の周辺をうろつく行動も禁止する保護命令になります。
この目的はこの2ヶ月間で、あなた(子供)の引越しをするための猶予を持たせることです。
退去命令が出ている2ヶ月でDV相手の知らない場所への引越しをしましょう。
保護命令は、永遠に近づいてはいけないという命令は出せず、以下有効期限が定められています。
<保護命令の種類> | <有効期限> |
1.接近禁止命令 | 発令から6ヶ月 |
2.電話等禁止命令 | 発令から6ヶ月 |
3.子供への接近禁止命令 | 発令から6ヶ月 |
4.親族等への接近禁止命令 | 発令から6ヶ月 |
5.退去命令 | 発令から2ヶ月 |
ただし、保護命令の期間を延長することも可能です。
先程、「保護命令の期間を延長することも可能です。」と述べましたが、正確には延長では無く、再度同じ保護命令を申請することになります。
提訴などで時間がかかっている場合、保護命令の期限である6ヶ月が過ぎてしまうケースもあります。
その場合には再度同じように保護命令を申請し裁判所に認めてもらうことで更に延長することが可能です。
延長の際には、1度目の保護命令の申立書と保護命令書の謄本をつけて提出する必要がありますので、しっかり保管しておきましょう。
保護命令の申請から発令までは時間がかかりますので、早めに申請しておくことをおすすめします。
保護命令の申立人
保護命令は,以下の要件を満たす者が,申し立てることができます。
1.配偶者からの身体に対する暴力等を受けた者
配偶者からの身体に対する暴力を受けた被害者が,配偶者からの更なる身体に対する暴力により,又は,配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた被害者が,配偶者から受ける身体に対する暴力により,その生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときに,申し立てることができます。
なお,「配偶者」には事実婚の者を含みます。また,配偶者から暴力等を受けた後に離婚をした場合であっても,引き続き元配偶者から暴力を受け,その生命又は身体に重大な危害を受ける恐れがある場合には,保護命令を申し立てることができます。
2.生活の本拠を共にする交際相手からの身体に対する暴力等を受けた者
生活の本拠を共にする交際相手から暴力等を受けた被害者も,上記(1)と同様に申し立てることができます。生活の本拠を共にする交際相手から暴力等を受けた後に,生活の本拠を共にする交際関係を解消した場合も,上記(1)の離婚の場合と同様に,保護命令の対象となります。
なお,「生活の本拠を共にする交際」からは,婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいないものは除かれますので,(1)専ら交友関係に基づく共同生活,(2)福祉上,教育上,就業上等の理由による共同生活,(3)専ら血縁関係・親族関係に基づく共同生活などは除外されます。
引用元:裁判所HP「保護命令の申立人」
簡単にまとめると、保護命令を利用するには以下3つの要件を全て満たす必要があります。
例えば、あなたとDV加害者が交際関係でも、同棲関係ではない場合、①が満たされず保護命令の申請ができません。
また婚姻、事実婚、同棲関係期間には暴力や脅迫が無く、これらの関係が消滅した後に暴力・脅迫がはじまった場合も②が満たされず保護命令の申請ができません。
では、こういった保護命令が申請できない場合はどうしたら良いのでしょうか?
先程の保護命令が申請できないケースは、保護命令による解決ではなく、DV(暴力・脅迫)について、警察へ被害届を出し刑事事件として立件してもらいましょう。
また、DVを受けていたという立証・証拠が不十分なため、申請を却下される場合もあります。
ですのでDVの証拠はしっかり確保しておきましょう。
DVの証拠について詳細はこちら↓の記事もご参照ください。
相手方が保護命令に違反すると,刑事罰(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)の制裁が加えられることになります。
参照:裁判所HP
裁判所の文章の通り、相手が保護命令に違反した場合は刑事罰が課せられます。
DV相手が保護命令いずれかに違反している場合には直ちに警察に通報してください。
なお保護命令の申立ては毎年約3,000件弱ありますが、保護命令違反で検挙、逮捕されることも多いので、迷わず警察に連絡してください。
保護命令の発令には、DV被害にあっている事実を、配偶者暴力相談支援センターや警察に相談した事実が必要になります。
まずは、配偶者暴力相談支援センターや警察に相談しましょう。
もし事前に相談をしていない場合は、DVを受けた状況などを記載した宣誓供述書を作成し、公証人役場で認証を受けておく必要があります。
あなたか相手方の住居地、またはDV被害が発生した場所を管轄する地方裁判所に申し立てをします。
申立をすると裁判所では相談した警察などへ照会をして、相談した内容を事前に確認します。
その後、裁判所で裁判官からさまざまな質問(面接)がおこなわれます。
保護命令に伴う事象は身体への危険があり緊急性が高いケースが多いため、他の申し立てに優先して審査されます。
その後1週間前後で、相手方に裁判所への出頭が求められ裁判所は相手を呼び出し、相手からも話を聞きます。
この手続きを口頭弁論や審問と言います。
もし指定の期日に相手方が出頭しなかった場合は、書留送達によって相手方に決定書が送付され、接近禁止命令の効果が生じます。
申立書に添付されていた資料や陳述書の内容、当事者から聴取した結果を踏まえて、裁判所が保護命令を発令します。
必要と判断されれば当日中に接近禁止命令が発令されます。
迅速な発令を望むのであれば、まず弁護士に無料相談するのが良いでしょう。
離婚問題に経験豊富な弁護士であれば、証拠集めや書類準備を的確に進めることで、より早い解決につながります。
DV、DV慰謝料請求、離婚などについてご不明点、具体的にすすめたいけど分からない方は、お気軽に専門家へ無料相談をしてみてください。